グリスノートは仲間たちのそんな反応に渋面をつくり、それからガシガシと頭をかいた。

「仕っ方ねぇな……。リディー!!」

 入り江全体に響き渡る大きな呼び声に、岩山を登っていたリディがぴたりと足を止めこちらを振り向くのが見えた。

「ちんたらしてっと置いてくからなー!」

 兄のそんな怒鳴り声にリディはすぐに同じくらいの声量で返した。

「わかってんわよー!!」

 そうしてまた彼女は岩山を駆け上がり始める。
 それを見届けてからグリスノートは今度は仲間たちに向かって大声で呼びかけた。

「よーし、準備の続きだー! 急ぐぞ、てめぇらー!」

 そして再び仲間たちの威勢のいい声が上がったのだった。



「リディ良かった」

 ほっと胸を撫でおろす。

「リディにとっては、兄と共に船に乗ることが“夢”だったのかもしれんな」

 セリーンの言葉にハっとする。
 小さな頃は一緒に船に乗りたいとせがんだ、そう話していたリディ。

「うん、きっとそうだね」

 だとしたら、この船旅はグリスノートの夢であり、リディの夢でもあるのだ。

「それに、海賊の飯は酷いと聞いたことがあるからな。リディが同乗してくれるのは有難い」
「そ、そうなんだ……」

 思わず顔が引きつってしまった。もしそれが本当なら、心底有難い。
 なんにしても、女の子が増えるのは単純に嬉しかった。