「うん……でも多分、町の人たちは信じてるんだよね」

 だから一応この町を出るまではふりは続けないといけない気がした。

「まぁ、とにかくこれでヴォーリア大陸に向かえるな。その前に例の術士の海賊とやらとひと悶着ありそうだが」
「その人と何があったんだろうね」
「そんなの知ったこっちゃねぇ」

 ラグが吐き捨てるように言ったそのとき、扉の開く音がして見ればリディがオルタードさんの家から出てくるところだった。声を掛けようとしたが、彼女はなんだか怖い顔でそのまま船の方へと突き進んでいく。

(リディ?)

「兄貴―!!」

 その甲高い大声に船上にいたグリスノートはすぐに気づいたようだ。船縁から顔を出しこちらを覗き込んだ。

「なんだよ?」

 するとリディは大きく息を吸い込んで、更に大声で告げた。

「私も一緒に行くから!!」