家の外に出ると、ラグがイラついた様子で待っていた。
 目が合うと彼はなぜかぷいとそっぽを向いてしまって、首を傾げつつ声を掛ける。

「いきなり大勢人が集まってきてびっくりしたでしょ?」
「びっくりしたなんてもんじゃねぇ。ったく、わらわらと出てきやがって」
「なんだ、ひとり除け者にされて拗ねているのか? その姿では全く可愛くないぞ」
「うるせーよ! あの野郎が余計なことを」

 その瞳が出航の準備で忙しそうな船を睨んだ。
 今、入り江にはたくさんの人の声が飛び交い、船には次々と荷物が運び込まれ、つい先ほどの静けさが嘘のようだ。その中にグリスノートの姿を見つけて私は視線を戻す。

「グリスノート? 何かあったの?」

でもラグは舌打ちひとつして首を振った。

「なんでもねぇ。……で、結局どうなったんだ」
「うーん、なんとかなったよ」
「なんとか?」

 眉を寄せたラグに、どう答えようか迷っているとセリーンが続けてくれた。

「出航の許しは出たが、ふりは通じなかったな。私も加勢したんだが」
「んだよ。ならさっさとそんな格好やめちまえ」

 ラグが私の花嫁衣裳を顎で指した。