「――風が」 「歌うなよ」 「! う、歌わないよ!」 ……正直、危なかった。 (なんて綺麗な歌) 頭の中に流れたメロディもその楽園を描いた詞もとても美しくて、歌えないことが心底もどかしかった。 「鳥が歌い……」 そのときラグが難しい顔で呟いた。 「例のあの白い鳥のことか?」 「え?」 ラグが私を見る。 「セイレーンの楽園に、あのグレイスとかいう鳥の仲間がいたんじゃないか」 「あっ!」 私は声を上げて、ラグの頭に乗るブゥを見上げた。