今だって風の術で転ばされたのに、怒りはしても恐怖は全く感じていないようだ。
 やっぱりセイレーンに興味があるからだろうか……でも、じゃあリディは?

「お前のせいで笑われてんだぞ、わかってんのか!?」

 ラグを見れば予想通り暗がりでもわかるほどに顔を真っ赤にしていて。

「あの元執事にお前の変態っぷりが伝わっちまうぞ!? いいのかよ!?」
「オルタードか? 別に全く問題ないぞ? むしろこのままオルタードにお前を紹介しにいきたいが早速行くか」
「やめろーーーーっ!!」
「ひぃ~っ! やっべ、腹いてぇ……っ!」

 急に騒がしくなったその部屋で、私はひとりハハ、と乾いた笑いをこぼしていた。