「いつも薄笑いを浮かべた腹の立つ野郎だ」
「いつも綺麗な笑顔と声で、優しく話してくれます!」
ラグの言葉を訂正するように私は大きな声で言う。
するとグリスノートは再びワルそうな顔を見せ、こちらに身を乗り出した。
「おもしれぇ。俄然興味が湧いてきたぜ。俺も会えるもんなら会ってみてぇ。金のセイレーンに」
「じゃあ……!」
グリスノートは不敵な笑みで続けた。
「あぁ。俺の持ってるネタ全部教えてやるからよ、そっちも知ってること全部包み隠さず差し出しやがれ」
私たちは顔を見合わせる。
(全部、は無理だけど……)
私が異世界から来た「銀のセイレーン」だということさえ黙っていれば――。
「わかった」
ラグがそう答え、私も頷いた。
「よし、決まりだ」
グリスノートはパンっと自分の足を叩いて、ベッドの上で胡坐をかいた。
「これは俺が長年セイレーンについて調べて、自分なりの推測も入ってはいるが。――金のセイレーンは銀のセイレーンによって、その存在を消されたんだ」
「!?」
私は大きく目を見開く。ラグとセリーンも息を呑むのがわかった。
(銀のセイレーンに、エルネストさんが……?)
また頭がズキリと痛んだ気がした。



