と、そのとき。

 ――!

 甲高い歌声が部屋の中に響き渡った。グレイスだ。
 その声に応えるようにラグの服からすぽんっとブゥが飛び出た。グレイスも同時に飛び立ち2匹は嬉しそうに天井付近を飛び回ってから仲良く窓際に降り立った。グレイスは再び先ほどの人形の頭に。ブゥはそのすぐ傍らに。

 ちっとグリスノートの舌打ちが聞こえて焦る。ここに来てまた不機嫌になられたらたまらない。迷っている時間はないと、私はすぐさま話を切り出した。

「私たちセイレーンのことが知りたいんです! だから、あなたが知っていること全部教えてくれませんか?」
「ふん。全部とは、随分と欲張りだなぁ?」
「特に、金のセイレーンのことだ」

 ラグの低音に、ピクリとグリスノートの片眉が上がった。そしてその目が少しだけ真剣さを帯びる。

「金のセイレーン……エルネストのことか」