彼女の故郷であるエクロッグ近くのサエタ港まで順調に行けば7日だと出港時船長さんから教えてもらった。荒野を半月歩くのに比べたら大分楽に思えたが、あとまだ4日もこの船の上かと思うと今は揺れない陸の方が良かったかもしれないなんて考え始めていた。

 でもだからと言って、たかが船酔いくらいでラグに術を使ってとお願いすることは出来ない。この船には私たち以外にも多くの人が乗っているのだ。セリーンもわかっていて私のためにそんなふうに言ってくれているのだろう。……多分。

「ラグは?」
「まだ寝ているんじゃないか?」
「そっか」

 船室へと下りる階段に視線をやってから私はセリーンに言う。

「このまま順調に進むといいね」
「そうだな」

 今のところ天候には恵まれている。今もどこまでも澄んだ青空が広がっていて海風も心地いい。でも海の天気は変わりやすいそうだから油断は出来ない。
 この穏やかな海でさえ酔ってしまっているのにこれで海が荒れたりしたら……考えただけでまた胃がむかむかとしてきた。

「海賊もこのくらい立派な船ならば襲ってはこないだろうしな」
「……へ?」

 隣に立ったセリーンの言葉を聞いて私は思わず間抜けな声を出していた。