「お願いカノン。兄貴のお嫁さんになって!!」
「ぇ……えぇ!?」

 あまりに唐突過ぎるまさかのお願いに思わず大声を出してしまっていた。
 リディの顔が更に迫ってくる。

「だって歳もそう変わらなさそうだし、兄貴の夢にも理解があって、カノンが今イディルに来てくれたのだってもう運命としか思えないよ!」

 その勢いに気圧されてしまい口をパクパクさせていると、ぐいと肩を引かれ驚く。

「こいつは駄目だ」
「え?」

 リディの視線が私の背後に移る。私もそちらを振り返り彼を見上げた。

(ラグ?)

 彼はまっすぐにリディを見下ろしていた。

「こいつには、帰らなきゃならない場所がある」

 その真剣な声音にどきりとする。

「だから他をあたれ」

 そして彼の手が私から離れていった。