「え! 兄貴もうそんなことまで話してるの!?」

 真っ赤に顔を染めて叫ぶリディ。余程恥ずかしいみたいだ。

(でも、この世界じゃこれが普通の反応なのかも)

 グリスノートのように歌に興味がある人の方が変わり者とされてしまうのだ。
 それを少し寂しく感じて、私は苦笑しながら言う。

「実は私もセイレーンの秘境には興味があってね、だからほんとはその話もお兄さんとしたいんだ」

 すると案の定リディは目を丸くした。

「でも、グレイスの件で私たち完全に嫌われちゃったみたいで――え?」

 がしりと急に両手を握られてびっくりする。
 リディが真剣な眼差しで私を見ていた。

「カノン」
「な、なに?」
「もう貴女しかいないわ」

 妙な圧を感じて、そういえば朝にも同じような目をしたリディに詰め寄られたことを思い出す。
 ぎゅうっと痛みを感じるほどに強く私の両手を握りしめ、リディは思い切るように告げた。

「お願いカノン。兄貴のお嫁さんになって!!」
「ぇ……えぇ!?」