そんな、取り留めの無い話をしているときだった。

 ずっと繰り返し耳に入ってくる波音と船体の軋む音に混じってその“音”を聞いた気がして私は咄嗟に窓の方を見やった。

「どうした?」

 私の突然の動きにセリーンの声に緊張が走る。

「今、変な音……ううん、声が聞こえた気がして」

 私は起き上がりながらじっと窓の向こうを見つめたが真っ暗で何も見えない。
 今聞こえるのは波音と、船体の軋む音と、自分の心臓の音だけだ。でも確かにさっき……。

「声?」

 セリーンの問いに私は頷く。
 とても高い声だった。まるで……。

「女の人の、歌声みたいな」

 声に出したら急にぞっと寒気がして私は慌ててセリーンの方を見た。

「で、でも、聞き間違えかもしれないし」

 セリーンが愛剣を手にベッドから下りる。

「セリーン?」
「念のためだ。外を見てこよう」