「私か?」
「うん、昔から強かった?」

 するとセリーンは苦笑しながら首を横に振った。

「いや、普通の娘だったな。どちらかと言えば大人しい方だった。外で遊ぶよりも家の中にいる方が好きだったしな」
「へぇ!」

 意外なセリーンの子供時代を知って私は思わずそう声を上げていた。
 こういうとき、ついアルさんがもしこの場に居たらと思ってしまう。きっと目を輝かせて聞いていたに違いない。

「その頃から花が好きだった?」

 アルさんが別れ際に贈った赤い花を、彼女が押し花のようにして大事にとってあることを私は知っている。

「あぁ。母が好きでな。その影響で覚えたな」
「あ、私のおばあちゃんも花が好きでね、私の名前に花の意味の字を入れてくれたの」
「そうだったのか。カノンという名にはそんな意味があるのだな」
「うん! あー、でも私は花の種類にはあんまり詳しくないかも……」