そのワケは、こちらが訊く間もなくグリスノートが勝手に喋ってくれた。

「あのモンスターのせいでなぁ、俺の可愛いグレイスが歌えなくなっちまったんだよ!」

(グレイスが……?)

 その名が出て気づく。船でグリスノートの肩に留まっていたグレイスの姿が今はない。
 なぜそれがブゥのせいなのかはわからないが、あんなにグレイスの歌声を絶賛していた彼にとってそれが一大事だということはわかった。

「どういうことだ」

 セリーンが問うとグリスノートはわなわなと身体を震わせた。

「俺の口から言わせる気か……? グレイスはなぁ……グレイスは、てめぇらといたあのモンスターに心を奪われちまったんだよ!」