もうすぐ劇の公演が始まる。しかし、今日はいつもの劇場ではない。

この劇団は、諸外国やアンネストールのあちこちに行って劇を披露することもある。今日はケイリーの故郷であるゲンマにやって来た。アンネストールの東にある田舎だ。

俳優になってから、ケイリーは故郷にあまり帰っていなかった。今日は家族や知り合いが大勢見に来ると聞き、緊張していたのだ。

「ケイリーの故郷で新作の発表ができるなんて、とっても嬉しいわ!」

アイヴィーが微笑み、ケイリーも「そうだね」と頷く。新作はケイリーが主役だ。悪人から宝石やお金を奪う怪盗の役をする。

「アイヴィーさん、ケイリーさん、頑張ってください」

脚本家のかぐやに声をかけられ、「もちろん!」と二人は微笑む。かぐやの考えてくれた劇は、今回も面白いものだった。それを壊すわけにはいかない。

他の役者たちの準備も整ったようだ。みんな台詞をもう一度確認し合ったりしている。