「探さないと、あの子を……!」

少女の頭の中に、また声が響く。自分の名前をぼんやりとした記憶の中で誰かが呼んでくれていた。

少女はまた、雨の中を走り始めた。



アンネストールの首都、ブリューゲルは豪華絢爛やオペラ座や多くの舞台があることで有名だ。世界的に有名な俳優や女優が今日も活躍している。

ブリューゲルの高級住宅街にある大きな屋敷にも、有名な俳優が住んでいる。金髪の少し長めの髪を束ね、空のような薄い青の瞳は、今日公演される舞台の台本を見つめていた。

「シリウスさん、朝食の時間です。舞台からは一旦離れてください」

台本を見続けるシリウス・プランタンに、桜色のリボンを髪につけた小柄な黒髪黒目の女性が呆れたように声をかける。しかし、その目はどこか愛おしげにシリウスを見つめていた。

「かぐや。わかったよ、きちんと食べる。でももう少しこの世界に浸らせてよ。君の生み出す物語は本当に壮大で、素晴らしいんだから!」