幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜

「今日はお客さんは一人だ。でもその一人を楽しませられなければ、何万人もの人を楽しませることはできない。全力でいこう!」

シリウスが舞台袖で出演者たちにそう言うと、「はい!!」と全員から返事が返ってくる。シリウスはゆっくりと舞台に上がった。

最初のシーンは、西の国の王子が結婚の話をされる。そして、王からある国に仕事で行くよう命じられるのだ。

緞帳がゆっくり上がっていく。シリウスは西の国の王子になりきることを決め、目を閉じた。

「王子、そろそろあなたも結婚相手を見つけなければなりません」

「俺はそんなものには興味はない。興味があるのは剣と紅茶だけだ」

演劇が静かに始まる。シリウスは、舞台からエヴァが真剣に舞台を見てくれているとすぐにわかった。しかし、その嬉しさは顔に出さずお芝居を続ける。

劇はどんどん進んでいき、東の国の王子としてケイリーが登場する。そして、二人は仕立て屋で働くアイヴィーに恋をした。