幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜

「とりあえず、エヴァは客席に座って。今から演劇がどんなものか見せてあげるよ」

シリウスはエヴァの肩に触れる。その肩はシリウスのものよりずっと華奢だ。

「わかりました。楽しみ……です」

アイヴィーに抱きしめられた時とは違い、エヴァは恥ずかしがることもなくシリウスを見つめる。触れられているのに、意識をしてもらっていない。そのことに少しだけ心を痛めながら、シリウスはケイリーたちに新しい舞台の準備をするよう指示した。



今度公演予定の劇の内容は、恋を知らない二人の王子の物語だ。二人の王子はある国に仕事で行った際、その街の仕立て屋の娘に恋をしてしまう。そこから、一人の女性をめぐって二人の王子の恋の戦いが始まるのだ。

「シリウスさん、メイクをしますね」

「ありがとう」

シリウスは西の国の王子を演じる。そのため、普段着から青い豪華な王子の衣装に着替え、レプリカの剣も腰に差した。レプリカと言っても、本物そっくりに作られている。