西にある大国、アンネストール。武力、財力、全てに優れ、国民が幸せな国として有名である。美しい街並みは多くの観光客を魅了し、アンネストールは今日も発展していく。

しかし、どんなに美しい国であっても、薄汚れたスラム街というものは存在する。美しい建物で誤魔化されたこの裏路地は、治安も悪く人は滅股に寄り付かない。

そんな裏路地には、多くの白い聖職者のような衣装を見に纏った人たちが倒れていた。そして、彼らから少し離れたところに一人の十代後半とおぼしき少女が倒れている。

赤いリボンのついた緑のドレスは、土埃や返り血などで汚れている。綺麗に編み込みがされ、紫の花の髪飾りのついた白く長い髪も乱れてしまっていた。

少女は気を失っているのだが、その姿だけでも人の目を惹きつけるほど美しかった。まるで眠り姫のように、静かに横たわっている。

どれほど時間が経ったのか、空が薄気味悪い鉛色になり始める。しばらくすると雨が降り出した。空から降り注ぐ水滴は、街を一瞬にして濡らしていく。