「シリウスさん、大丈夫ですか?お屋敷まで歩けますか?」

「うん、大丈夫……」

お酒にはもともと強くないためワインを二杯しか飲んでいないのだが、シリウスの足元は少しふらついてしまう。

「やはり、馬車を呼んだほうが……」

そう言うかぐやに「大丈夫!」とシリウスは笑ってかぐやの頭に手を置いた。

「かぐやは心配症だな〜」

「そ、そういうわけでは!」

お酒を飲んでいないはずのかぐやの顔も赤くなる。しかし、シリウスはそれを気にすることなくかぐやと話しながら屋敷へと戻っていた。

「次はどんな物語を作るの?」

「そうですね……。一人の女性を巡って二つの国の王子が戦う物語にしようと考えています」

「いいね〜。ロマンチック〜」

その時、シリウスの耳に何かが倒れるような音が聞こえてきた。シリウスは足を止める。横にあるのは、治安の悪そうな裏路地だ。

「シリウスさん?」

足を止めたシリウスを、かぐやが不思議そうに見上げる。シリウスは「先に帰ってて」とかぐやに言い、裏路地に入って行った。