透の目の前には、「Rosenkreuzer」という単語が書かれる。しかし、それがどういう意味なのかわからない。英語ではないようだ。

「ローゼンクロイツァー……」

美咲が呟き、玲奈が頷く。「どういう意味?」と透は訊ねた。

「ドイツ語で薔薇十字団という意味だ。中世から存在すると言われる秘密結社の名前」

「秘密結社……」

何の目的で、この単語を犯人が選んだのかはわからない。それでも、透の目の前で玲奈はその目に怒りを滲ませていた。

「もう一度この事件を調べてくる」

そう言い、玲奈は立ち上がる。透も同時に立ち上がった。

「俺も行く」

「は?」

透の言葉に玲奈は驚いている。透は頰を赤くしながら言った。

「一人で抱え込むなよ。俺はお前の助手だ。……お前を助ける」

「あたしも行くよ。玲奈の友達であり助手だから」

美咲もそう言って立ち上がった。すると、玲奈の瞳が潤んでいく。

「……ありがとう」

とても小さな声だったが、その声は確かに透と美咲の耳に届いていた。