暗闇の中、ベッドサイドの灯りが薄暗く浮かび上がる。その頼り無い明るさの中、果てた麻衣の身体を抱きしめた。そのまま、鼻先をすり寄せると、少し困り顔をしながら、それでもくすぐったそうに笑う麻衣。


その表情が柔らかくて、惹き寄せられて、考えるより先にその唇に触れた。



“いつか繋がるだろうなとは思ってた”


……相変わらずサクラは勘が鋭いと、思った。

多分、俺が麻衣に興味を抱いていたとサクラには分かってたんだと思う。いつからか、はわからないけれど…もしかしたら、俺が自分で気が付いていない時点で既にわかっていたのかもしれない…よな、サクラは。



真斗とサクラの逢瀬は必ず松也さんの所だった。

けれど、そこは作田さんや俺の行きつけでもあって。だから、4人で飯を食うことも度々あって。酒に酔うと、必ずサクラは麻衣の話をしていた。『もうね!麻衣は本当に可愛いの!大好きなの!』って。


『麻衣に負担をかけたくなかった』


あれは、紛れもなく、サクラの本音。本当は、ずっと話したかっただろうと思う、麻衣には。その位、サクラは麻衣を好きだったし、信頼していた。


だから尊重したかった。サクラが麻衣に話すタイミングを。

けれど…そのおかげでサクラの話が麻衣から出てくる度に、確信の無い言い方になっちゃって。今考えたら、それが麻衣の疑心暗鬼と不安を生み出してたんだなって…後で反省した。

まあ…俺も必死だったから、この一週間。ちゃんと余裕を持って、あなたの事考えられてなかったかもしれないよね。

だけど…この先は違う。
もう絶対、そんな不安な想いはさせないから。


「…麻衣」


名前を呼んだら、麻衣が上目遣いに俺に視線を向ける。それに少し微笑んで、唇を再び塞いだ。


「…好き。」


キスの狭間、俺の呟いた言葉にまた嬉しそうに微笑む麻衣。その表情にまた惹かれておでこ同士をくっつける。


…何か、ほんと贅沢な話だって思うんだよ、俺は。
誰もが、触れると笑顔になる、そんな麻衣の“温かさ”を独り占めしてるんだから。


「あーあったかい。」
「…宮本さんもあったかいです。」
「うん、頑張ったからね。」
「……。」
「ああ…足りない?」
「ち、違います……」


逃げ腰になった麻衣をより引き寄せた。


…でも、逃がさないよ?
せっかく期間限定じゃなくなったんだから。


再び堪能し始めた柔らかな唇。
首に回り、俺を引き寄せてくれる麻衣の腕の感触も加わってより満たされる。


……悪いけどね、麻衣。
ここから先、俺がずーっと独り占めさせて貰うから、麻衣のこと。



~fin.~