* * *
コンコン
「お約束していた鈴木光です」
「どうぞ」
ドアの外から挨拶すると、中から男の人の声が聞こえてきて、私は慎重にドアを開く。
「…失礼します」
私が軽く頭を下げた先にいたのは、大きな机の前に座っている50手前くらいの貫禄ある男性。
この男性こそがゆりちゃんが通うこの高校、私立希望が丘高校の理事長だ。
つまりここは、理事長室。
私は昨日の約束通り、ゆりちゃんが学校で気を失った件とそのせいで記憶喪失になった件に関して理事長に報告しに来ていた。
「…光さん。久しぶりだね」
「…はい。ご無沙汰しております」
挨拶もほどほどに、案内してもらった来客用のソファに向かい合って座ると、私は早速報告を始める。



