「ごめんね、私そろそろゆりちゃんを家に連れて帰らないと」
そう言って眠っている少女を起こさないように抱き上げる光さん。
「きみは、この辺に住んでいるの?」
「あ、はい、ここから歩いて五分くらいのところです…」
「そっか……じゃあまた会えるかな。今日は本当にありがとうね。見ず知らずのゆりを慰めようとしてくれたこと、すごく嬉しかった」
本当にありがとう、と言いながら光さんはペコリと頭を下げてくる。
「いえ、そんな。結果的に俺は何もできていないので。それより俺のこうこそお礼を言いたいです。光さんに話を聞いてもらって、少し気持ちがスッキリしましたから…」
本当に、話しただけでこんなに変わるものなのかと思ってしまった。
でも、さっきまではどんよりしていた心は確実に晴れへと変わっているんだ。



