だけど逆を言えば、楽しいことや嬉しいこと、得意なことも必ず誰もにあるはずなんだ。
俺は小学生ながら、母さんの言葉にとても救われたというか、他の人と自分を比べる必要はないんだって気づいた瞬間だった。
だから、その時から家族で出かけられないことは気にしないことにしていたし、今度は俺が母さんを元気づけよう、そう思って勉強や習い事を今まで以上に頑張っていたのに。
母さんがいなくなって、俺は目的を見失った。
そして、嫌いだった父さんを好きになろうと努力していたが、俺は父さんのことがますます嫌いになった。
というか、信じられなかったんだ。
母さんが死んでも表情一つ変えずに、相変わらず仕事で忙しくしている父さんが。
俺だって母さんの葬式で泣かなかったけど、父さんだって涙一つ見せなかった。



