その後、風香が先にお風呂を借りた後に柊がお風呂に入った。シャワーだけだから早いけど寝てていいよ。と、寝室に促されたけれど、風香は彼を待っている事にした。

 彼の寝室は物がほとんどなく、読みかけの本と照明、時計ぐらいしかなかった。
 風香はベットに座り、ボーッとしながらまた考え事をした。

 お風呂場にも風香もシャンプーなどは置いてはいなかったし、脱衣所には風香用のパジャマやタオルもなくなっていた。風香が家から持ってきたもの使ったので問題はなかったけれど、行方不明になる前は確かにこの部屋にあったのだ。それが風香のものだけがなくなっている。

 まるで、この部屋までも記憶喪失になって、風香を忘れているようだった。


 「どうしてだろ………」


 風香は足をベットに外に置いたまま、体をポトンッと横に落とした。
 その瞬間に彼の香りを感じ、風香の瞼が重くなっていく。事件の後、事情聴取などをしておりもうすっかり深夜になっており、もう少しで辺りは明るくなる時間だろう。普段ならばとっくに寝ている時間。先ほどまでの緊張感が彼の部屋に来て、そして香りに包まれたことで失ってしまってしまったようだ。


 「柊さんの事待ってなきゃ………でも……少しだけ………」


 風香は、自分の眠気に勝つことが出来ずにそのまま眠ってしまったのだった。