「そうだよ。柊はそんな事しない」
 「そうだね。風香の大切な人だもんね。疑ってごめん」
 「ううん」
 「あ、でも、誕生日に柊さんの家に行くなら、メモリーロス探してみたら。噂によると、ピンクと薄紫色のパステル色のカプセルらしいよ。なんか可愛いよね」
 「そうなの………って、美鈴、まだ疑ってるでしょ?」


 身を縮め小さな声でメモリーロスの情報を教えてくれる美鈴に呆れながらも、知らなかった情報を手に入れられて、風香は聞き入ってしまった。
 確かに柊の部屋に行くならば、薬があるのか見てみたい気持ちもあった。けれど、彼の秘密を勝手に知るのは悪いように思ってしまった。


 「いろいろ言ってごめんね。でも、私は風香の事心配だから………辛くなったらまた相談してね。私が柊さんの頭をゴチンッてしたら思い出すかもしれないからっ!」
 「………わかった。耐えられなくなったらまた愚痴聞いてね」


 話しに夢中になっていたせいで、せっかくのミントココアが冷めてしまっていた。それでも、友達と一緒に飲むココアはとてもおいしい、はずだった。
 それなのに、美鈴の言葉が頭の中で引っ掛かり、味がわからないままに飲み干してしまったのだった。