10話「同じと違い」
恋人に戻った2人のキスは初々しくも、しっくりとくる不思議なものだった。
触れるだけのキスを何度か繰り返した後、柊は風香とアスターステラホワイトの花ごとゆったりと抱きしめてくれた。
「よかった………これで俺の恋人なんだね。何だか幸せすぎて、信じられないぐらいだよ」
「ふふふ……本当に?柊さんは私が柊さんを好きだって気づいてたと思ってたけど」
「それは……気を許してくれてるかなとは思ったけど………俺と似てる人が好きなのかと思ったから。告白はかなり勇気がいったよ」
「………好きです」
「え?」
「『柊さんが』好きなんだよ」
柊に嘘をついている事。
話せない理由がある事。
彼とこうやって恋人になる資格などあるのなと悩むけれど、だけど以前と変わらない事がある。
それが柊を好きだという気持ちだった。
離れたくない。
誰にも取られなくない。
また、好きになってほしい。
その気持ちが風香の背中を押してくれてのだ。
柊の記憶が戻ったら、しっかりと謝ろう。
そして、また自分を選んでくれてありがとうと伝えたい。そう思った。