その言葉を放った瞬間。
 美鈴の表情が固まった。先ほどあんなに楽しそうだった彼女の顔が、凍るほどに冷たい視線、そして憤怒の表情になり大きく口を開いた。


 「あんたがムカつくからよ!」
 「……………え…………」
 「たいして頑張ってもないで、家で絵を描いてるだけのくせに私より上手くいってる!私は走り回って、人に頭を下げ、媚を売って、人にバカにされながらも必死に頑張ってきた!それなのに、全てあんなの方が上手くいく。仕事も見つけ、婚約者まで…………っっ!!そして、挙げ句の果てには遺産でおっきな宝石まで持ってるって何なの!?私には何もない……自分の体しかないのよ!?」


 大きな声を上げて叫ぶように罵声を浴びせてくる。
 風香が初めて見る美鈴の表情。そして、初めて知る彼女の本当の気持ちだった。

 美鈴の興奮した様子を見て、風香は一気に頭が冷えていくのがわかった。
 彼女はそんな風に自分見ていたのだ。
 自分の事が嫌いで憎くて、自分の事を見るとあんな顔をしている。
 それなのに、我慢して風香と時間を共にしていたのだ。全ては風香の宝石のため。
 風香が友達だからではなかったのだ。

 それがわかった瞬間に、風香の記憶から彼女と過ごした楽しかった大切な思い出がガラガラと崩れ落ちるような気がした。

 虚しくて、悲しくて、切なしかった。


 「………美鈴は仕事頑張ってた。あなたより上とか下とか考えたことなかったけど。美鈴は、ネットショップで大成功してたじゃない?私なんかよりずっとずっとすごい………」
 「あんたバカなの?あんなの嘘よ」
 「え…………嘘…………」
 「ネットショップはすぐにダメになったわ。全く上手くいかなくて、私の元に残ったのは多額の借金と売れ残った服や小物ばかり。だから、こうやってここで生きてるの」
 「ここ………?」
 「薬を売る手伝いをしたり、体を売ったり。違法なことをして、何とかやってるっわけ。それでも借金なんて返せない。だから、あんたの宝石が必要なのよ!あんたに教えてたHPは人のもの。そこで服を買ったとか聞いては、バカな人って笑ってたわ。私の店でもないのにね」
 「………美鈴………私、そんな事知らなかった………知らなかったよ………」
 「当たり前じゃない。そんな虚しいことあんたに話せるはず分けないでしょ。私がバカなの晒すだけだしね。あんただって、私の事バカにするだろうし!」
 「そんな事思わないッ!」
 「うるさいっ!!」