「………ん………はぁ…………」


 唇が微かに離れた瞬間に洩れる吐息は甘く、唾液が合わさる水音が玄関に響く。それだけで興奮してくるのがわかってしまう。


 「………本当はもっと大人らしくスマートに誘うつもりだったんだ。それなのに、君があんな事を言って煽るから………」
 「あ、煽ってないよ。……でも、恥ずかしかった………」
 「あぁ……ごめん。そういうつもりじゃないよ。俺が我慢出来なかったのが悪いんだ。君にくっついていたいって言われた時から、もうずっと我慢してたから。いや………ずっとか」


 柊は唇が触れるか触れないかの場所で、風香を細目で愛おしそうに見つめながら、そう呟く。玄関の照明で、2人の唇が微かに濡れて光る。


 「さっきも言ったけど、風香ちゃんが俺と同じように、俺を欲しいって思っててくれたもわかったら堪らなく嬉しくて。早く自分のものにしたかったんだ」
 「ん………」
 「君の誕生日なのに、僕が貰っていいかな?」
 「うん……私も欲しいから………」
 「そういうのが、本当にずるいんだ………」


 そう言うと、柊はまた深いキスを風香に落とした。けれど、次のキスはすぐに終わり、また手を繋がれて彼の寝室に向かう。