20話「優しいお説教」
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彼との出会いを思い出してしまい、風香は大きくため息をついた。
「大丈夫?何かあった?」
「あ………」
「大きなため息だったね…………何かあった?帰ってきてから元気ないし」
「ううん。………何でもないよ」
「風香ちゃんの方から、迎えに来てほしいって言われたから驚いたんだ。嬉しかったけど………そんな不安そうな顔してるのみたら、俺はすぐわかるよ。理由を教えてくれない?」
いつもならばタクシーで柊の家まで帰っていたけれど、今日は一人で外に出るのが不安になってしまい、柊に連絡してしまったのだ。
けれど、理由は伝えずに「買い物がしたいから」と、言ってお願いをした。
だが、彼と一緒に家に帰っても考え事ばかりしてしまい、その変化に柊はすぐに気づいてくれたようだった。
「………怒らない?」
「それは内容によるかな」
「じゃあ話さない」
「嘘だよ!怒らないから、話してごらん」
柊はクスクスと笑ってそう言うと、ぽんぽんッと風香の頭を撫でた。
リビングのソファで寄り添ってテレビを見ていたが、柊はテレビの電源を消して、風香の方を見つめてくれる。「大丈夫だから」と、言わんばかりの優しい笑顔で風香の顔を覗き込む。
その表情を見てしまったら、黙っている事など出来ない。
元彼氏の話をするのは、あまり気が乗らなかったけれど、彼に話しをする事にした。
「今日、お弁当を持っていくのを忘れてしまって、お昼過ぎに外に出たの」
「え………そうなの!?」
「うん。あ、でも近くのコンビニだけだよ?」
「でも、そこに行って何かあったって事だよね?」
「う……それは……」
彼の目と口調が鋭くなり、風香は思わずたじろんでしまう。
その表情を見ると、彼が警察官だと思い知らされる。まるで、優しく尋問されているようだった。その笑顔には少しの怒りさえも感じられ、風香は内心で「怒らないでって言ったのに」と、思ってしまう。