気づけば私はまた涙を流していた。 私は叶多くんのこと全然思い出せなかったのに、叶多くんはずっと、昔の私も知っていた。 叶多くんは知っていて、私は知らない。 そして偽名で呼ばれる。 そんな状態で私と接していて…苦しくなかったの…? せっかく此岸にいられる時間を削ってまで私の前に現れたのに、忘れられている。 いくら記憶を奥に閉じ込めたからって、本当に叶多くんのこと、最後までなにも思い出せなくて…。 私って…最低だ。