やがて彼は深呼吸をしたあとに、話出した。
「絵を描くのが終わったらさ…話があるんだ」
「話?」
「そう。大事な話」
なんだろう。大事な話って。
そんなに改まって言うことなんてあるのかな…。
その時ひときわ強い風が吹いた。
ビュンッ!!
その瞬間、彼が被っていたキャップが飛ばされた。
「あっ!まって!」
キャップは風に乗り、柵の向こう側へと泳いだ。
彼はキャップを掴もうと身を乗り出す。
足はもう地面についていなかった。
「叶多くん、危ない!」
私はスケッチブックを投げ捨て、彼の元へ向かう。
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