キズノナメアイ




あの場面ですぐ帰ったら負けだと思ったし

終わりにするならもう関わりたくなかった。


その場でサヨナラにしたかったの。



だから、彼の話が終わるまで………

それに何か言ったら泣きそうだったから

何も出来ないまま。


ずっと涙を我慢してきた。



「……君は何も悪くないんだから、あいつのために泣くことなんてないんだよ?」



店長がそう言いながら、困ったようにそっとお手ふきを渡してきたから、

なんかその優しさも染みて

目元のメイクが取れちゃうな、なんて考えながら思いっきり泣いていた時……



「京!!!!ッ…てぇ!!」



知らない男が扉に肩をぶつけながら勢いよく入ってきた。