キズノナメアイ




「彼が好きになった人っていうのはどんな人か聞いた?」



覚えてない、って言いたかったけど



「なんか……取引先の受付嬢、って。」



彼は聞いてもないのにポツポツと話すから

嫌でも耳に入ってきた。


それに、話しながらも、時々鼻の下をこする仕草。

それは、彼が、照れ隠しの時にする癖で。


だから…



「多分、もうあれは付き合ってる、とおも…ッ……。」



途中から、言葉が出てこなくなって

涙が溢れてきた。