「雅……ッすまん!
…別れてほしい……。」


「……は?」



彼は決心したように顔を上げてそう告げた。



ホテルの高層階のレストランで向き合って座り

料理が来ているのに彼は下を向いていたから

体調が優れないのかと心配したが

そんな考えは一瞬で消え去った、いや、消した。



何を言ったんだ、目の前の男は。



時が止まったような沈黙。



彼は嘘がバレて母親に叱られる子供のように

こちらの様子を伺いながらも目が合うとそらし

時折何か取り繕おうと小さく口を開くが

すぐにその唇を固く閉じる。



私はレストランの窓から見える

夜景が綺麗だったことだけ

覚えて帰りたいな、なんて茫然と思っていた。