和服探偵

「何でそんなことが言えるの？」

僕だけでなく、女性たちや他のお客さん、警察の人まで驚く。亜梨沙ちゃんは高校生とは思えない落ち着いた態度で会場を見回して言った。

「もし、仮に犯人が逃亡する予定でこの会場に来たのなら、毒殺なんて手段には出ないでしょうね」

「どうして？」

僕が質問すると、亜梨沙ちゃんは「考えてみて」と真剣な目で言う。

「これがもし無差別殺人ならば、犯人も動きやすかったかもしれない。誰かのグラスに毒を入れればいいのだから。だって、最初からグラスはテーブルの上にセットされていた。一番最初にここに来て、グラスに毒を仕込めばいい。でも、ターゲットである花嫁を毒殺するとなると話が違う。花嫁の席に近付いたら全員に怪しまれる。でも紅茶の中に毒を仕込んだら、花嫁以外の人が飲んでしまうかもしれない」

「そうか！逃亡するなら結婚式が始まる前に花嫁さんを殺してしまえばいい。結婚式が始まる前なら花嫁さんが一人きりの時間はたくさんあるし、そうすれば確実にターゲットを殺すことができる」