和服探偵

「イギリスのウェッジウッドと呼ばれる陶磁器メーカーを代表するシリーズのことだよ。野いちごの実や花などが描かれた可愛いものなんだよね。私も持っててすごくお気に入りなんだけど……」

亜梨沙ちゃんは未だに怒鳴り続けている花嫁さんを見て、呆れたような目をしている。その目は親の顔が見てみたいと言いたげだ。

何分花嫁さんが怒鳴っていたかはわからない。でも、「お嬢様!屋敷からカップをお持ちいたしました!」と執事さんが入ってきた時に、全員が執事さんを救世主が来たという目で見つめたのは確か。

「フン!早く紅茶を入れなさい!」

花嫁さんはお礼も言わず、執事に命令する。執事さんは「かしこまりました」と丁寧にお辞儀をして紅茶を注いだ。その動作はとても綺麗……。

花嫁さんが紅茶を口にし、穏やかな披露宴がようやく戻ると思っていた。でも、それは大きな間違いだったんだ。

ガチャンとカップが割れる音がする。花嫁さんがカップを地面に落としたんだ。