するとすぐに帰ってきた彼は
そばを通ったタクシーを止めて


「今日はもう帰ろう。」


「え?でも」


大丈夫と言った彼は私をタクシーに押し込み

彼も横に座ると隣駅まで、と言った。


「でも、お金」
お財布を出そうとすると


「具合悪い女の子にお金払わせる男なんて
 さすがにいないって。」

また彼はそう言って微笑む。

そして、目に浮かんだままだった涙を
そっと人差し指で拭ってくれる。


どうしよう、胸の音がうるさい。