「No title」



「先輩、今日の放課後は大丈夫なので」


バイクを停めたところで
少し不機嫌な先輩に声をかける


それまで1度も視線が交わらなかった先輩の目が
ゆっくりとこちらを向く





「振られた相手と帰んの?」





そう言う先輩の目は笑っていないけど
片方の口角だけを少し上げる



いつものからかっている時のふざけた雰囲気はない


いつも感じない冷たい雰囲気
そんな空気に気まずくなって少し視線を横にズラす





「隆ちゃんは家族みたいなものです」


今にも消えそうな小さな声でそう答える


隆ちゃんが家族同然は事実

振られた相手ということも事実



私の唯一の心の支えで
家族同然だった隆ちゃん

そんな隆ちゃんが日本を離れる決心をした時

失いたくないと思い離れたくないと縋った

正直今私の気持ちがどこにいるのか分からない

突然隆ちゃんが現れてもちろん動揺はしている



だけど少し複雑な気持ちが自分の中にあった。