あの日、君と僕は

1時間目から6時間目までの約300分間、授業を受けると流石に心身ともに疲れる。

合間合間に十分間の休み時間があるが、それは生徒にとって貴重な心のオアシスなのだろう。

ほとんどの生徒が、それぞれ思い思いの過ごし方をしていて、なかなかに騒々しい。

二時間目と三時間目の間の休み時間、何をするでもなく柚葉は読書に取り掛かっていた。

普段から休み時間は本を読んで時間を潰していたためか、周りのクラスメイトからは「大人しい子」として定着しているようで、誰も近づいてはこない。

大人しいからではない。単に、人と関わることを避けているからだ。

いつからか、柚葉は人から避けるようになっていた。なぜかはわからないが、いつのまにか人と関わりたくないと思うようになったのだ。

「………」

どんなに周りが騒がしくても、読み止めるつもりはさらさらなかった。

だって、私には関係ないから。

関係のないことは近づかない。それが彼女のモットーだった。

関係ないのに不用意に近づきすぎると巻き込まれてしまう。

小学校で誰かがいじめられていた時、かばった誰かがいじめの標的になってしまっていたのはまだよく覚えている。

誰だったかは覚えていない。

そうなるのが怖いから、関係のあることだけ考えるようにしている。

全く関係ないのに考えたって何も変わらない。柚葉は、そういう考えを持っているのだ。

だから去年、『あなたは自分を持っている』と担任に言われたのだろうか。

しかし、考えたってわからない。謎は謎のままでいいと思う。

そこまでで、授業開始のチャイムが鳴った。