あの日、君と僕は

朝目が覚めた場所、自分の部屋へ行き、ベッドに座ると反動が帰って来た。

昔からこの感覚を蓮実は気に入っていた。

封筒の封を丁寧に切ると、数枚の便箋が丁寧に折りたたんでいた。

すると、あの風が吹いたときと同じ感覚——柚葉が振り返ったときの風——がした。

そういえば、文化祭の演奏が終わった後、柚葉(蓮実)がフルートを吹いてた時も同じ感覚がしたことを思い出す。

もしかして、と思い部屋を見渡してみる。

窓の外ものぞいてみる。

けれどやはり、柚葉はいなかった。

便箋を開いてみると、やはり可愛らしい丸みを帯びた文字がコロコロと並んでいた。

「柚葉…」

柚葉は本当に、実在するのだ。

この文字の羅列を見て、実感した。

もし柚葉は本当はいなかったとして、じゃあこれを書いたのは誰だ?

幽霊?

本当に柚葉は何処かにいることを願いたい。

だって、好きだから。
彼女の事が、彼女の音が。

いや、僕の音になるのだろうか。

「ゆず、は…」

もし、もしもまた会えるのなら。

また一緒に笑い合いたい。

それにしても、なぜ夢の中で柚葉と会えたのか。それも、学校が違うのに。

あの感覚がしたのはなぜか。

初めてそうなったのはきっと、空を見上げた時だ。

様々な謎が浮かび、手紙が読めないままになっていた。

——『謎は謎のままでいいと思う』

夢の中での一言が、蓮実の背中を押した。

律儀にも拝啓から始まってる手紙を読む。

どこからか、柚葉の声が聞こえてくるような気がした。