あの日、君と僕は

「返事、言わなかったのか!?」

「ほんとテンション高いな、お前」

「どうなんだよ?」

少しテンションが低くなった祐二に、

「『私も』て言った。」
と答えた。
「うわー、まじかー」

「るせーよ」

「いやー、お前もモテ期到来かー」

「だからうるさいって」

「つまり、柚葉って子が夢の中でお前になっててお前が柚葉って子になってたってわけか。」

「まぁ、そうなるな。」

「よくわかんねえけど、不思議だな。」

「俺も教室に入ったらなんか違和感あった。だって柚葉は三組で、学校も違うから」

「ほんとだ」

いつのまにか手の中にあったサンドイッチは無くなっていた。

今頃、小麦や卵は蓮実の胃の中で消化酵素によって分解されているのだろう。

「私もって返したってことはお前も好きだったんだな」

「そうなるな」

「うわー、ファンタジック。」

「それは俺でも思うわ」

教室もどろーぜ、と声をかける。


たった今、蓮実の家に一通の手紙が届いたことは二人とも知らないのだ。

………

きゅっ、きゅっ、という靴と床が擦れる音が体育館に響く。

カンコン、カンコン、とピン球が跳ね返る音と、靴と床が擦れる音で、吹奏楽部ほどではないが体育館は音にあふれていた。

蓮実が所属している卓球部では、主に体育館で活動している。

そういえば佳純に呼ばれた時は、いつもは鳴っているピン球の音はしていなかったなと思い出した。