あの日、君と僕は

「誰か探してんの?」

「いや、……」

「ならいこーぜ」

「うん。」

名残惜しいが教室に向かうことにした。


祐二に連れられ二年四組の教室に入るなり今まで見ていた教室と違うことに気がつく。

なぜだかはわからないまま教科書を鞄から取り出し、次の授業の準備をした。

天気は憎たらしいほどの快晴で、空を見ると眩しさですぐに目を離した。

その後、いつもと同じようにあまり発言せずに授業を終え、休み時間になると廊下に出た。

気づかれないように三組を覗く。

やっぱり、柚葉はいなかった。

「なんか用?」

背後から三組の人に声をかけられた。

「いや、あ、でも」

相手は怪訝な顔をした。

「相川っている?」

「は?」

「その、相川柚葉…」

「誰、それ」

彼は教室に入っていった。

誰、それ。

その言葉にショックを受けた。

「はーすみっ」

「うおわっ!?」

「へへ」

笑いながらこちらを見ているのは祐二だった。

不思議に思って友達に聞く。

「相川柚葉ってこの学校にいなかったっけ?」

すると予想していたことが返って来た。

「あいかわ?誰?」

やっぱり、と蓮実は落胆する。

「相川って誰?」

いや、と言葉に詰まる。

なんて説明すればいいのか…

「夢なのかもしれない」

「夢!?」

自分で言って、納得する。

そうだ、きっと夢だ。

だって、自分が柚葉だったから。

自分がいじめられて、自分が楽器を吹いていた。