あの日、君と僕は

吹奏楽部の部室のドアは開いていた。

途切れることなく管楽器の音がまだ続いていた。

どこか懐かしい、と思った。

どこかで聞いたことがあるような気がするが思い出せない。

その時、不思議な感覚がした。

あの時、不思議な風が吹いた時と同じ。

なぜだろう、そう思ったがわからない。

本来の来た意味を思い出し、部室の中を覗いてみる。

やはり、柚葉がいた。

横に伸びる細長いもの。

あれから音が出ているのだろう。

ふ、と彼女がこちらを見る。

そのとたん、目が大きく見開いた。

「坂野、くん?」

「やっほ」

「どうしたの?」

会いに来た、なんて恥ずかしいことは言えない。

「なんとなく?」

蓮実はそう答えた。

「そっか」

はにかんで笑う彼女のことがとても愛しく思った。

「これ、お土産」

柚葉に近づいて渡した焼きそば。

小規模な文化祭でも少ない三年生のクラスがこうして食材を扱えるようになっている。

下級生では、コイン落としならぬおはじき落とし、トランプの貸し出しなど様々に工夫して運営している。

「わーい、ありがとう!」

無邪気に笑う彼女を見て、またもや愛おしく思った。

楽器を近くにあった椅子に置き、袋の中を覗いている。

「相川がやってる楽器ってフルート?」

袋から目を離した彼女が笑いながら答える。

「うん、よく知ってるね」

「いや、音楽が好きなだけ。」