あの日、君と僕は

「ふーっ……」

なんで思い出してしまったのだろう。

……ガチャ。

はっと顔を上げると、ドアの前で顧問がいた。

「相川さん、クラスにはいかなくて良いの?」

「…はい」

そう、と顧問は答えた拍子に、胸元までかかる茶色を帯びた髪が揺れた。

彼女が近づいてくる。

「相川さん、伝えたい事があるんだけど、時間は大丈夫?」

「…大丈夫、です」

「そう。…先生はね、あなたが頑張っている事、よく知っているの。」

まさか、と思った。

嫌がらせのことを言われるのだろうか。

「そんなに怯えなくても大丈夫よ。」

表情に出ていたのか、そう言った。

「わたし自身、あなたは入部した時よりもずっと上手くなっていると思う。今は、現役の中でも多分、一番うまいんじゃないかって思ってる。」

ひゅ、と息を飲んだ。

有言実行、そんな四字熟語が浮かんだ。

「だからね、あなたがちゃんと目標を達成できたことにとってもすごいなって思ってる。それでね、」

持っていた何かの紙を、柚はに向かって差し出す。

そこには、吹奏楽の強豪校の高校の名前が書かれていた。

「もし、相川さんがまだ進路を決めていないのなら、この高校を受験するのはどうかなって思ってるの。公立だから、あまり負担もかからない。まぁ、ただの提案だからどうするかはあなた次第だから、ここも視野に入れておいてね。」

「……はい」

先生は微笑み、「文化祭楽しんでね」とだけ言い残し、部屋を出て行った。

「…うそ…」

目標を達成できたことへの嬉しみが膨らむ。