あの日、君と僕は



「お疲れ様でした」

「ありがとうございました!」

柚葉たちの演奏が終わって楽器を部室に持っていくと、それぞれ自分の席に座り、顧問のからの話を聞いていた。

「今日の演奏はそれぞれ、思うところもあると思いますが、わたし的にはね、練習の合奏の時よりも良い演奏だったのではないかな、と思います。
きっとお客さんも楽しんでもらえたと思うし、みんなも楽しそうでした。」

と区切り、

「これからはアンサンブルの練習もしていかないといけないし、まだまだ伸び代もあると思うので、一人一人、練習を頑張っていきましょう」

「はい!」

「それでは、解散します。今日はありがとうございました。」

「ありがとうございました!」

顧問の指示通り、楽器を片付ける人もいれば、同じパート同士の人と話している。

部室に誰もいなくなるまで、柚葉はフルートを持ったまま、座ったまま動かなかった。


顧問の先生の言っていた通り、柚は自身はとても楽しかった。

なかなかうまくいかなかった連符も、今日は上手くできた。

美羽は、どうだっただろうか。

「……っ」

美羽……

楽しかった余韻に浸っていたのに、またあの日の悪口を思い出してしまった。

だんだんと人が部室から出ていく。

誰一人いなくなってから、大きく息を吐いた。