少しすると、晴れてきたのでそのまま帰宅することにした。

スニーカーは棚の中にはなく、床に散乱してあり、とてもじゃないが履く気にはなれないが、履くものはこれしかないので仕方なく、それを履いて帰った。


…泣きたい。


無性に、そう思った。

だが、今泣くと母親に心配をかけてしまう。

それだけは避けたいので、空を仰いだ。

こうすると、涙は止まると思った。

さっきの雨が嘘のように、青空が広がっていた。

その時だった。


不思議な風が、ひゅうっと吹いた。


不思議だったのだ。

そんなに強くなく、かといって弱くない。

そして何故か、柚葉を振り返らせた。

誰もいないことはわかっている。

見えるのは、さっきまで歩いてきた道。

そういえば、こっちの方面は坂野の家だったな、と思った。

少しだけそのまま道を見ていたが、諦めたように振り返り、いつもの帰り道を歩いた。


……………




蓮実は、空を見た。

正確には、仰いだ、といったほうが正しいかもしれない。

学校からの帰り道。

吹奏楽部の音がまだ聞こえる。

さっきの雨が嘘のように、澄んだ空が頭上にある。

綺麗だ、と思った。

その時、強く、優しい風が吹いた。

不思議な風、と呼んだほうが正しい。

誰がいるのか、何故か蓮実は振り返った。

やはり、誰もいない。

何故蓮実が空を見たのか、振り返ったのか、わからない。

それでもやっぱり、空は晴れていた。