あの日、君と僕は

「え?」

「目標も、部活を辞めるのも、そんな気は全然ない」

「ねえ、あなたの立場わかってんの?」

佳純は嘲笑した。

紛れもなく、柚葉に向かって。

「わかってるの?いじめられてるんだよ?」

「わかってる。」

「じゃあ、」

「わかってるから!!」

っ、という目の前の人が息を飲むのが聞こえた。

怖くない。

あの三人も、目の前にいるこの人も。

所詮は全員、中学生。一人の、人間だということに気がついた。

「ふーん?柚葉ちゃんってそういう人なんだ。」

「どういう、…」

「そのまんまの意味。自分が不幸になるのを楽しんでる。」

「そんなことっ!」

そんなことない。

ただ、見下されたから見返したいだけ。

「わかった、どうなっても知らないよ?」

「…。」

「味方にはならない。もしかしたら、敵になることだってあり得る。今のうちに引き下がった方がいいよ?自分の幸福のためなら。」

「自分の幸福を願うんだったら、自分の選択を信じるのが一番だと思う。」

ふーん、と佳純は続ける。

「その選択が、あの目標ってことね?」

「うん」

「ほんと、私は何も知らないから。たとえあなたが痛い目にあったとしても。」

「……」

きっと、敵になることは確定なのだろう。

最初から敵になるつもりでこうして柚葉と話している。そうに違いない。

「じゃあ、練習戻るね〜」

そう言って、彼女は踵を返す。