あの日、君と僕は

「柚葉ちゃんの目標ってさ、現役生の中で一番上手くなること、だよね?」

「…うん。」

ギクリとしながらも正直に答えた。

そっか、と可愛らしい声で言った。

それと同時に、彼女に対しての嫌悪感を覚える。

きっと、その声こそが自分の一番可愛らしく聞こえる声なのだと知っている。

知っているからこそ、自分をアピールするために使っているのだと悟る。

「柚葉ちゃんてさぁ、」

「うん、」

「今の部活の状況、わかってるの?」

「……」

「どんな雰囲気なのか、言ってよ」

「えっと…」

わからない。

そんなこと、気にしたこともなかった。

今の部の状況。雰囲気。

なに、それ。何か、あったの…?

「わから、ない」

そっかー、とまた甘い声で佳純は言う。

「これはただの案なんだけどさ、柚葉ちゃんが言ってた目標、撤回したほうがいいと思うよ?」

「なんで…?」

「あなたも知ってるでしょ、サックスとペット、パーカスの人がぐちぐち言ってるの。」

「うん」

あれさ、と言いかけて、少し悩んでいるように見えた。

なんだかいたたまれなくなって、ぎゅっと袖をつかんだ。

「あの人たちはさ、今の部の状況と柚葉ちゃんの言動がすごいかけ離れていて、鼻についているみたいなの。」

「…うん」

それには、心当たりがある。

鼻につく、迷惑。

そう、言われてきた。

「だからさ、きっと、あの目標は撤回した方がいいんじゃないかなって思うの。」

「……」

嫌だ。

そんなの、嫌だ。

ふつふつとそんな想いが込み上げてくる。

「そんなつもりは、ないよ。」