あの日、君と僕は

私って、そんなに迷惑な存在だったんだな。

部活を辞める考えなんて全くない。

しかし、迷惑、と言ったその人は苛立ちを隠せない表情をしていた。

多分、他の誰かにあの表情を見せたら飛びのいていたかもしれない。

柚葉がそんなに驚かなかったのは、その表情を恐れていたのではなく言った内容に恐れていたからだというのが理由だ。

迷惑。鼻につく。
これまでそんな言葉を浴びせられた。

だからこそ、今朝の三人から…いや、部員全員から見直させたい。

それが、自分にとって唯一の抵抗なのだ。

いつの間にか、柚葉が最初に見つけた虹はたくさんの人が見ていた。

だんだんと薄れていく虹を、記憶に残らせる。

どんなに綺麗に写真を撮ることができても、肉眼で見るより良いものはない。

だからしっかり、目に焼き付けておいた。

………

「柚葉ちゃん」

「…どうしたの?」

ちょっと来て、と佳純が言った。

楽器を椅子に置き、佳純と一緒に廊下へ出た。


掃除が終わり、部室に来て楽器を組み立てると早々に佳純から呼び出された。


今日は卓球部の活動はないのか、カンコンというピン球が壁に当たる音がしない。

あるいは今日は体育館での練習なのかもしれない。

佳純はその卓球部の部室である教室の前に立つと、くるりと振り返った。

彼女の肩まで伸びた髪の毛が揺れる。

絹でできた服を解くとこんな風になるのかな、と思った。